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ある男がいた。
弱者を救済する団体にはいって
献身的に活動している人だった。

その団体のカリスマ性あるトップの理念に感動し、
身を粉にして活動するうちに、真面目な彼は
そこそこ高い役職に引き上げられることになる。
その団体は発足時は弱者を救っていこうという気概があった。

しかし正しい理念を実現するためなら
社会的に非常識なことでもやってもいいといった
カルト的な側面があったという。

そしてなによりも各人に課せられる厳しいノルマ。

真面目な彼は上の命令に従順で、
部下の面倒もよくみたが、ノルマに追われる日々に
疲労が積み重なって体調を崩してしまう。

疲弊して塞ぎ込みがちになった彼を見ても、
仲間は関わりあいになろうとしなかった。
皆、自分のことで精一杯なのだ。

弱者救済が目的で創立された団体であったのに、
隣に座っている者の悩みや苦しみには、
おそろしく無関心な場所だった。

精神的に追い詰められた彼は、ある日、死を決意し
ひとり冬山へ向かった。

冬山で凍え死のうと思ったのだ。
しかし死にきれず、山の装備の不十分な
うかつな登山者のふりをして
たどりついた山小屋に避難した。

山小屋の人たちは彼の真意を知ってか知らずか
なにも聞かずに彼に暖かい寝床と食料を提供してくれた。

彼はそのまま山小屋に居ついて従業員として働きはじめる。
真面目で働き者の彼は、やがて山小屋の人たちから
頼りにされる存在になる。

彼は都会に残してきたしがらみを一切語らなかった。

ただ日が暮れて仕事が済むと
頭上にさえぎるものなく広がる空を、
山の端から規則正しく昇ってくる星々を
膝を抱えて見ていたという。

やがて昇ってくる星と星を結びあわせて、
星座になるのが分るようになった。

夏には山と山に架け橋を渡すような天の川が流れ
晩秋には流星群が降ってくる。

彼は星を見つめているうちにふと思った。

四季をめぐる規則正しい星の運行、
どんな冬であってもやがて春となる太陽の軌道。

天には正しいリズムが存在する。

けれども人を病ませる組織は
しょせん人がつくったものであり、
それは天の摂理に反した歪んだものではないのか。

昼は太陽の下で、夜は月と星の下で人間らしく生きていこう。
人として大事だと自分が真に思えることを信条にしていくんだ、と
彼は突然目が醒めるような気持ちになった。

そしてお世話になった山小屋の人たちに
あつく礼をいって山を下り、
いまは生まれ変わったように元気に暮らしていると聞く。

会社や組織の車輪の下になって「死にたい」と思ったときに、
スマホのなかを漂うのでも、
国内外の街をさまようのでもなく、
ただいっしんに本物の星を眺めつづける。

人にはそんな時期があってもいいのじゃないか、と思う。

夜空の星の配置は、
プリンターから印刷されて出てくるホロスコープで分る。

けれども大事なことを見失いそうになったら、
本物の星を見にいきたい。満点の星を。

Time Lapse #080 ペルセウスの夜 Night of The Perseids 2013-08



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その団体は発足時は弱者を救っていこうという気概があった。

しかし正しい理念を実現するためなら
社会的に非常識なことでもやってもいいといった
カルト的な側面があったという。

そしてなによりも各人に課せられる厳しいノルマ。

真面目な彼は上の命令に従順で、
部下の面倒もよくみたが、ノルマに追われる日々に
疲労が積み重なって体調を崩してしまう。

疲弊して塞ぎ込みがちになった彼を見ても、
仲間は関わりあいになろうとしなかった。
皆、自分のことで精一杯なのだ。

弱者救済が目的で創立された団体であったのに、
隣に座っている者の悩みや苦しみには、
おそろしく無関心な場所だった。

精神的に追い詰められた彼は、ある日、死を決意し
ひとり冬山へ向かった。

冬山で凍え死のうと思ったのだ。
しかし死にきれず、山の装備の不十分な
うかつな登山者のふりをして
たどりついた山小屋に避難した。

山小屋の人たちは彼の真意を知ってか知らずか
なにも聞かずに彼に暖かい寝床と食料を提供してくれた。

彼はそのまま山小屋に居ついて従業員として働きはじめる。
真面目で働き者の彼は、やがて山小屋の人たちから
頼りにされる存在になる。

彼は都会に残してきたしがらみを一切語らなかった。

ただ日が暮れて仕事が済むと
頭上にさえぎるものなく広がる空を、
山の端から規則正しく昇ってくる星々を
膝を抱えて見ていたという。

やがて昇ってくる星と星を結びあわせて、
星座になるのが分るようになった。

夏には山と山に架け橋を渡すような天の川が流れ
晩秋には流星群が降ってくる。

彼は星を見つめているうちにふと思った。

四季をめぐる規則正しい星の運行、
どんな冬であってもやがて春となる太陽の軌道。

天には正しいリズムが存在する。

けれども人を病ませる組織は
しょせん人がつくったものであり、
それは天の摂理に反した歪んだものではないのか。

昼は太陽の下で、夜は月と星の下で人間らしく生きていこう。
人として大事だと自分が真に思えることを信条にしていくんだ、と
彼は突然目が醒めるような気持ちになった。

そしてお世話になった山小屋の人たちに
あつく礼をいって山を下り、
いまは生まれ変わったように元気に暮らしていると聞く。

会社や組織の車輪の下になって「死にたい」と思ったときに、
スマホのなかを漂うのでも、
国内外の街をさまようのでもなく、
ただいっしんに本物の星を眺めつづける。

人にはそんな時期があってもいいのじゃないか、と思う。

夜空の星の配置は、
プリンターから印刷されて出てくるホロスコープで分る。

けれども大事なことを見失いそうになったら、
本物の星を見にいきたい。満点の星を。

Time Lapse #080 ペルセウスの夜 Night of The Perseids 2013-08


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